Skeed社のSSBPの表面的まとめ

Interop2012 の現地で SSBP (Skeed Silver Bullet Protocol) のことを聞いてきたのでまとめ。

SSBP のターゲット・特徴

SSBP は LFP (Long Fat Pipe; 物理帯域は太いがRTTが大きい経路)で大容量のファイル転送を短時間に終えるプロトコル

  • テープ送ればいいじゃん→物理媒体送るのは税関とか紛失とかが怖いよねって場合に。
  • RTT が大きい経路やパケット落ちが起きる経路でも TCP より性能が落ちにくい。
  • 既存トラヒックとの公平性についても考慮してる。

デモでの性能

現地デモ。対ヨーロッパ(アイスランド。だっけ?) 1GBのファイル10本転送 FTP 比で 1/10 程度の時間でファイル転送を終えていた。

しくみ

UDP の上に再送制御・レート制御・セキュリティ機能(DH+AESらしい)を載っけたもの。
TCP だと ACK の待ちがあり、それのせいで物理線の帯域を100%使い切れなかった。
パケットが落ちた場合の再送やレート制御の仕組みが単純・保守的なので効率が悪い。
UDP だと ACK 待ちが無いので次から次へとどんどん送れる。
もちろんパケット落ちする場合があるので、再送制御の仕組みは入れている。

レート制御には標準・控えめ(他のトラフック優先)・アグレッシブ(SSBP優先)がある。
レート制御部分については特許申請中。

その他

講演より印象に残った部分

  • クラウドの特性を考えると、コンピューティングリソースの安い場所でデータを処理すべき
    • (冷却コストを考えると)気候やら昼夜やらで利用料金が変わるようになる
    • 処理される巨大なデータが大陸や太洋を跨いで移動することになる
  • TCPはオワコン
    • 性能が全然出ない
    • TCPは30年前に作られたプロトコルで昨今のクラウド環境(長距離の大規模データ転送)に適用するのは間違い

感想

SSBP は LFN 上での大容量ブロック転送にターゲットを絞った特化型プロトコルで、 TCP のような L4 プロトコルに取って代わるようなもにはならないっぽい。
でも FTP は駆逐されるかも。
レート制御は内部的にはもう少し細かいパラメータがあるかもしれない。


この手のプロトコルは、その昔(10〜20年前ぐらい?)からHighSpeedTCPやらFastTCPやらScalableTCPやらと、HPCやGridとかを扱ってる学術界隈でいろいろやられてきていた。
それがクラウドという潮流で、コンシューマ、商用に降りてきて、本格的にお金の問題になってきた。
そういったニーズが出てきたところにタイミング良く「製品」の形にまとめて出してきたのが商売上手だなぁと。
学術界隈って一般には「製品」クオリティまで持っていかないからねぇ。シミュレーションが普通。よくて概念実証で終わり。みたいな。素地があるのにもったいない(こういうこというと「それは研究者の仕事じゃない」と怒られるわけですが)。


あと講演の注目度は流石といったところで、用意されてたイスは全部埋まり、立ち見が2重3重状態。47氏のネームバリューすげぇ。と素直に感心したり。


はてブのエントリを見ると誤解がある部分があるようなので、適当に

  • 金子氏が開発した
    • どうも違うらしい。当人の言によると「自分は大道芸人」「自分がコード書いたら『バグ入れるな』って怒られるw」らしいw。氏の関与はポイントポイントでのコメントコミットぐらいなのかもしれない。
  • TCPと比べて
    • TCP とは層も違うしターゲットを絞っているので、汎用のTCPそのものとの比較はナンセンス。比べるなら FTP とかのファイル転送系と比べるべし。
  • MessagePack
  • WAN高速化装置
    • でもお高いんでしょう?これはソフトウェアだから安いよ(と説明されてました)
  • 飛行機でテープを運べば…
    • テープの中に日本人の高校生の水着写真が含まれてたら税関で「このロリコンめ!」って没収されちゃう><
  • FASPソリューション
    • 比較するならこの手の物でしょうね
  • 記事タイトルが悪い
    • そう思う

以上。聞いてきた分をまとめたので本来の現物とか思想とかとは違う部分もあるかもだけど。